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大阪高等裁判所 昭和57年(ネ)268号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(一) Xと被控訴人は、昭和三八年四月五日婚姻し、その間に長男Y1(昭和三九年一月一三日生)、長女Y2(昭和四〇年六月二七日生)、二男Y3(昭四一年一〇月七日生)をもうけ、兵庫県津名郡○○町○○で共同生活をして、Xは製鋲業を営む傍ら五〇年ころから神戸市生田区○○でスナックを経営していたところ、製鋲業の営業が次第に不振となつて来たことと三人の子の教育問題もあつて、昭和五二年四月に被控訴人と三人の子は神戸市垂水区○町に転居したのであるが、そのころXの製鋲業は多額の負債をかかえて倒産し、債権者らが自宅にも押しかける状態が続いた。

(二) そのような中で、同年五月、Xは、債権者対策として形ばかりの協議離婚届を作成し債権取立てに伴うトラブルを回避して一時的にこの場を切り抜けよう、と被控訴人に持ちかけ、離婚届用紙に被控訴人の署名捺印を得た上、完成させた離婚届を同年六月七日に自ら垂水区役所に届け出、その旨戸籍の記載がなされた。

(三) 同年七月に被控訴人と三人の子は姫路市内に転居し、Xは被控訴人に対し、生活資金として銀行振込の方法により毎月一〇万円の送金を続けることとなつたのであるが、スナック開店に際して知り合いとなつていたXと控訴人X1は、そのころから深い仲となり、同年八月に同居を始め、同年一二月二八日には婚姻届出をして、昭和五三年六月二九日に長男X2が誕生した。

そのようにして、Xは、被控訴人に対しては次第に疎遠となり、昭和五三年九月ころには控訴人X1とともに大阪府八尾市内に居住して喫茶店経営を始めたのにかかわらず、被控訴人に対して所在場所を一切知させず、毎月の一〇万円は送金していたものの、銀行に対する振込依頼書にも住所及び自己の電話番号を記載せず(他人の電話番号を記載していた。)、住民基本台帳上は、新たに本籍としていた姫路市勝原区○×××番地の××に、Xが昭和五二年一二月二八日、控訴人X1と長男X2が同五四年一月二九日、それぞれ転入した旨届け出ながら、一度も同所に居住せず、電話による連絡もと絶えて、Xと控訴人X1は所在不明の状態となつて行つた。

(四) 昭和五四年になつて、被控訴人は、前記離婚届出がなされた後Xと控訴人X1が同棲しその婚姻届出がなされ一子をもうけていることを知り、同年五月ころ同人らが八尾市内に居住して喫茶店を経営していることを突き止めた。そして、そのころ被控訴人と長男のY1は右X方に赴き、同人を難詰し、Y1が腹立ちまぎれにXを手拳で殴打し、被控訴人はY1の心情を察してそれを止めようとしなかつたことや、Y1がXに控訴人X1との離婚を強要することがあつた。その後間もなく、Xら三名は再び身を隠し、所在場所を秘匿した。

(五) 神戸家庭裁判所姫路支部に係属することとなつたX申立ての家事調停(同庁昭和五四年(家イ)第四六五号離婚後の紛争調停事件)及び被控訴人申立ての家事調停(同庁同年(家イ)第四七三号協議離婚無効確認調停事件)は、X側の強い希望で同人及び利害関係人たる控訴人X1の住居所は被控訴人側に知らされることのないまま、昭和五五年二月に行われた期日をもつて不成立で終了したが、被控訴人申立ての内容はXと控訴人X1に伝えられていて、同人らはそのことを認識し、右調停不成立の上は被控訴人においていずれは本訴を提起することとなることは充分に予測される状況であつた。

(六) 結局、Xと控訴人X1は長男とともに、昭和五五年九月末ころ、もと居住していたことのある堺市内の同控訴人肩書住所地に落ち着いたのであるが、なお所在を秘匿し続けたため、被控訴人が昭和五五年六月四日に本訴を提起するに当たつて、被告らである右両名の住居所が不明であるとして、同人らに対する公示送達の申立てをしたのに対し、原審において兵庫県姫路警察署長及び神戸家庭裁判所姫路支部に対する同人らの所在調査嘱託が行われたのにもかかわらず、いずれも所在は不明であるとの回答がなされるに至り、右公示送達によることが許可された。

その結果、訴訟手続は行われて昭和五六年七月一七日に原判決は言い渡され、判決言渡しについても公示送達による判決正本の送達についても、X及び控訴人X1において了知しないまま、同人らは控訴期間を徒過し、原判決は確定した。

2 以上の事実関係の下で判断するに、控訴人らは、Xと控訴人X1が所在を被控訴人に秘匿したのは、専らY1の暴行を防ぐための手段であつて他意はない旨主張するのであるが、Y1の暴力ないし強要行為は一時的なものと考えられるし、Xの一連の行動を見るとY1の立腹には無理からぬものもあると思われるのであつて、Xが前記家事調停の後も住所を秘匿したのは離婚届出被控訴人から所在を隠し続けたことと無関係と解することはできず、それはむしろ、被控訴人からの離婚無効の追及を免れることが主たる動機であつたと解される。

してみると、Xは離婚問題の法的解決を自ら放棄していたものというほかなく、控訴人X1はそれに同調していたのであるから、原判決に対する控訴期間を徒過したことには右両名とも重大な過失があるといわざるを得ないのであつて、右判決の送達が公示送達によつてされたからといつて控訴期間を遵守することができなかつたことがXと控訴人X1の責めに帰することのできない事由によるものであるということは到底できず、控訴の追完は許されないものである。

(荻田健治郎 堀口武彦 渡邊雅文)

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